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April 01, 2012

ニシオジロビタキとオジロビタキの識別点

Category : 《参考》

【ニシオジ口ビタキとオジ口ビタキの違いについて】
ニシオジロビタキは、「日本鳥類目録 改訂第7版」(日本鳥学会、2012)において、検討中の種・亜種として記載されています。
学名は、 "Ficedula Parva (Bechstein, 1792)"、英名は、"Red-breasted Flycatcher" となります。
オジロビタキは、「日本鳥類目録 改訂第7版」(日本鳥学会、2012)において、数少ない旅鳥・冬鳥として記載されています。
学名は、 "Ficedula albicilla (Pallas, 1811)"、英名は、"Taiga Flycatcer" となります。
ただし、「日本鳥類目録 改訂第7版」(日本鳥学会、2012)には、「日本で越冬する個体のほとんどはニシオジロビタキとあるが,その確認はされていない」ということも記載されています。

当ブログにおいて、ニシオジロビタキは、学名の "Ficedula Parva" から「Ficedula(キビタキ属)の Parva(Parvaという種)」ということで、キビタキ属としています。

この2種は、それらの身体的特徴が似ている為、その識別(同定)がとても難しいとされています。
その理由として挙げられるのが、
[その1] ニシオジ口ビタキでも下嘴がほぼすべて黒い個体もいる(図表1参照)
[その2] オジ口ビタキでも下嘴の基部がわずかに肉色の個体もいる(図表1参照)
[その3] ニシオジ口ビタキでも上尾筒が黒い個体もいる(図表1参照)
などで、これまで識別(同定)に用いられてきた身体的特徴である下嘴や上尾筒の色に個体差が存在する為です。

つまり、この2種の識別(同定)を身体的特徴だけに依存すると、信憑性が欠けてしまうということになってしまうのです。


【識別(同定)する上での1つの指針】
では、どのようにして識別すれば良いのか? その1つの指針として、
[その1] オジ口ビタキは、数少ないが定期的な旅鳥として、春秋に主に日本海・東シナ海沿岸を通過する(図表1・2参照)
[その2] ニシオジロビタキは、数少ないが定期的な冬鳥として、本州以南に渡来し、春秋は日本各地を通過する(図表1参照)
という点に着目すると、

 オジロビタキは、ノビタキやエゾビタキのような旅鳥。
 ニシオジロビタキは、ルリビタキやジョウビタキのような冬鳥。

旅鳥、冬鳥の認識は、国内の地域によって異なりますが、関東周辺において、このような共通点が導き出されるのではないかと思います。


【識別(同定)を確実にする上でのもう1つの指針】
識別(同定)を確かなものにするために着目しなけばならない点が存在します。
それは、声についてで、冬の間であれば、当然、地鳴きということにります。
図表1の声の欄にあるように、
ニシオジロビタキの声は、5音程度からなり、擬音化すると「ジリリリリ」または「ビティティティティ」というもので、人間の聴覚で音の数の認識が可能となります。
オジロビタキの声は、10音程度からなり、擬音化すると「drrrrrrrr」というもので、人間の聴覚で音の数の認識が不可能で、ニシオジ口ビタキに似ているものの、それと比較するとテンポが2倍程度速くなります。
これだけでは、わかりづらい点も多々あるようにも思われますので、参考資料として、両種の越冬地でもあるインドで録音された、両種の声のリンク先を例示します。

参考資料
インドで録音されたオジロビタキの声(コーネル大学鳥類学研究所)
インドで録音されたニシオジロビタキの声(コーネル大学鳥類学研究所)


【日本列島で越冬する個体についての考察】
以前は、ウラル山脈の向こう側からどのような経緯でこの極東の日本まで飛来するのか、そのメカニズムは解明されていませんでした。そんな遠くから渡ってくることなど考えられなかった為です。そんな中、「日本列島から割と近い地域で、ウラル山脈西側の個体群とは別の極東固有の個体群が存在するのでは?」 という大胆な仮説まで浮上した程ですが、結局、そのような個体群は発見されていません。

その一方で、ニシオジロビタキが長い距離の渡りをするということは以前から周知の事実でした(図表2参照)。そんな観点から現時点(2015年5月)では、「長い距離の渡りをする野鳥ほど迷いやすい」 という仮説に対する信憑性が高まっている模様です。もちろん、ウラル山脈西側の個体と日本へ飛来した個体の身体的特徴が極めて酷似しているという点も後者の仮説を後押しすることとなっているようですが、今後、DNAレベルでの解析が進むにつれて、はっきりするのではないかと思われます。
また、ニシオジロビタキとオジロビタキは、ウラル山脈周辺で繁殖域が重なりますが、交雑は限定的のようです。

いずれにしましても、「日本鳥類目録」の次の改訂版になるであろう「日本鳥類目録 改訂第8版」(日本鳥学会、20??)において、何らかの示唆があることを期待したいところです。

図表1 ニシオジロビタキとオジロビタキの比較
種別 ニシオジ口ビタキ
漢字表記 : 西尾白鶲
学名 : Ficedula parva (Bechstein, 1792)
英名 : Red-breasted Flycatcher
オジ口ビタキ
漢字表記 : 尾白鶲
学名 : Ficedula albicilla (Pallas, 1811)
英名 : Taiga Flycatcer
下嘴は基部側が肉色、先端が黒い。
オジロビタキほど頑丈に見えない。
下嘴がほぼすべて黒い個体もいる。
上下嘴とも黒い。太く頑丈に見える。
下嘴の基部がわずかに肉色の個体もいる。
上尾筒 最長上尾筒は暗褐色。
黒い個体もいる。
漆黒色(jet black)で、普通、中央尾羽よりも黒い。
中央尾羽と同程度の個体もいる (春の摩耗した個体は特に注意)。
雄成鳥の喉・胸 喉に赤橙色のパッチがあり、胸までおよぶのが普通。
胸の中央に灰色部がない。
喉の赤橙色パッチは小さく、上胸までしか至らない。
パッチ下側に灰色の胸帯がある。
胸帯の下側に赤橙色斑がある個体が稀にいる。
第1回冬羽・雌成鳥の体下面 胸・脇は一様に暖かみのあるパフ色。
喉はやや淡く、淡バフ色。
雌成鳥は春に白っぽくなる。
胸・上腹はバフ色味が乏しく、灰色か灰褐色。
喉は白く抜けたように見え、ルリビタキ雌タイプを思わせる。
第1回冬羽の大雨覆・三列風切羽先 スポット状にバフ色。
羽縁の模様は細い。
羽縁の模様は白っぽく、太い。
第1回夏羽になっても羽縁が残ることが多い。
第1回夏羽 大多数の雄が成鳥羽を獲得するのは第2回冬羽のため、ほとんどの個体は雌雄判別不可能。 雄第1回夏羽の頭の模様は雄成鳥に似て喉はすでに赤橙色のため、雌雄判別が容易。成鳥と比べ、幼羽が残る外側大雨覆に淡色の羽縁が残り、初列風切は摩耗・褪色し褐色味がある。
一度に5音程度からなる 。
「ジリリリリ」 または 「ビティティティティ」 と聞こえ、人間の聴覚で音の数の認識が可能。
ただし個体や状態により声の速さは変わり、判断が難しいことがある。
ムジセッカに似た 「チャッ」 という声を出すこともある。
10音程度からなる。
「drrrrrrrr」 と聞こえ、人間の聴覚で音の数の認識が不可能。
ニシオジ口ビタキに似るが、 それと比較するとテンポが2倍程度速い。
日本への渡来状況 数少ないが定期的な冬鳥として、本州以南に渡来し、春秋は日本各地を通過する。
人を恐れない個体が多い。
数少ないが定期的な旅鳥として、春秋に主に日本海・東シナ海沿岸を通過する。
冬季の記録は極めて稀。
落ち着きなく飛び回り、近距離で観察できない個体が多い。
繁殖地 ウラル山脈の西側 (主にヨーロッパ周辺)。 ウラル山脈の東側 (シベリア、カムチャッカなど)。
越冬地 インド・パキスタン周辺、アフリカ大陸北西部の一部および日本列島太平洋側 東南アジアおよびインド周辺。
《出典 : 『BIRDER 05 2015 MAY』 (文一総合出版、2015) p.44をもとに加筆。》

図表2 ニシオジロビタキとオジロビタキの繁殖地と越冬地 ニシオジロビタキとオジロビタキの繁殖地と越冬地
《出典 : 上記図表1をもとに作成。》



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参考文献
「日本鳥類目録 改訂第7版」(日本鳥学会、2012)
『BIRDER 05 2015 MAY』(文一総合出版、2015)

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